東福寺

住職墓所

住職墓所""

住職の墓所には、2基の念仏塔がある。

十九夜念仏塔

十九夜念仏塔

江戸中期・享保7年(1722)造塔の十九夜念仏塔(※7)。石塔型式は舟型。中央に主尊の如意輪観音が浮き彫りされている。「奉造立」「十九日女念仏講中」「施主五拾人」「享保七壬寅」「十月十九日」の碑文が確認できる。

※7 十九夜念仏塔とは、十九夜の夜に女性たちが集まって、念仏を唱えたり、飲食しながら雑談をして夜をふかした行事(月待=つきまち)を行なった証(あかし)として建てた石塔のこと。十九夜塔とも呼ばれる。

参考|越谷市内の女性だけで建てた石仏

2021年に「越谷市内の女性だけで建てた石仏」という論考を発表しました。この十九夜念仏塔も紹介しています。

「越谷市内の女性だけで建てた石仏」は越谷市郷土研究会のホームページで閲覧可能。以下 URL を示します。
http://koshigayahistory.org/r03_02_k_sudoh.pdf

観音像付き念仏塔

観音像付き念仏塔

江戸前期・延宝元年(1673)造塔の念仏塔。石塔型式は舟型。中央に主尊の観世音菩薩立像が浮き彫りされている。「念仏講中」「延宝元年丑十月吉日」の碑文が読みとれる。
 
台石には、「新方之内」「小林村」の銘と、寄進者23人の名前が刻まれている。

旧・観音堂墓地の石仏

東福寺の墓地

かつて、東福寺の鬼門(北東)に観音堂があったが、区画整理によって廃寺となり、本尊と墓地は東福寺に移転された。
 
旧観音堂墓地から東福寺に移された11基の石仏と石塔を調査した。

墓地内での調査なので、

個人墓地には立ち入らずに外から目視で確認するなど、迷惑にならないよう配慮し、慎重に調べた。

青面金剛像庚申塔

青面金剛像庚申塔

江戸中期・享保5年(1720)造塔の庚申塔。石塔型式は変形の駒型。正面に「日月」「六手合掌型の青面金剛像」「邪鬼」「三猿」が陽刻されている。
 
脇銘は「奉供養庚申講」「人数八十五人」「現当二世所願成就所」「享保五庚子八月吉祥日」「武州新方領小林村」「人数」「敬白」の文字が確認できる。

地蔵菩薩

地蔵菩薩を主尊とした石塔が7基。

地蔵像付き念仏塔|年代不詳

地蔵像付き念仏塔|年代不詳

舟型の念仏塔。造立年代は不詳。陽刻されている主尊は薬壺(やっこ)のようなものを持っている地蔵菩薩。越谷市郷土研究会・顧問の加藤幸一氏は、「この地蔵は両手に薬壺のような形に描いてしまった宝珠を持つ」(※8)と述べている。

※8 加藤幸一「増林地区の石仏石塔」平成11・12年度調査/令和4年改訂(越谷市立図書館蔵)(2)東福寺、118頁

地蔵尊の頭の左横に地蔵菩薩を表わす梵字「カ」。脇銘は「右建立之志者為男念仏講中」「二安禾也」、「右建立之志者為地蔵講中」「世大願成就也」とある。

地蔵像付き供養塔|享保3年

地蔵像付き供養塔|享保3年

江戸中期・享保3年(1718)造立の供養塔。石塔型式は舟型。浮き彫りされている主尊は数珠(じゅず)を持つ地蔵菩薩立像。顔の表面が破損している。頭の左横に地蔵菩薩を表わす梵字「カ」。
 
脇銘は「享保三戊戌九月四日」のほか、施主名や戒名などが確認できる。

地蔵像付き供養塔|年代不詳年

地蔵像付き供養塔|年代不詳

合掌している地蔵菩薩立像が浮き彫りされている舟型の供養塔。造立年代は不詳。頂部に地蔵菩薩を表わす梵字「カ」。先祖の冥福を弔うために建てた旨の銘文と、施主ふたりの名前が刻まれている。

地蔵像付き念仏塔|享保3年

地蔵像付き念仏塔|享保3年

宝珠(ほうじゅ)と錫杖(しゃくじょう)を持った地蔵菩薩立像が浮き彫りされている舟型の念仏塔。江戸中期・享保3年(1718)造立。地蔵尊の顔の左横に梵字「カ」。
 
脇銘は「右建立之意趣者為」「□中」「女人念仏講」「二世」「大願成就也」のほか、「享保三戊戌九月廿四日」「施主」「村仲□□□之女人」などの文字が確認できる。

地蔵像付き供養塔|享保3年

地蔵像付き供養塔|享保3年

幡(はた)を持った地蔵菩薩立像が陽刻されている舟型の供養塔。江戸中期・享保3年(1718)造立。地蔵尊の顔の左横に梵字「カ」。
 
銘文は「享保三戊戌」「九月□四日」のほか、施主の名前と子ども三人の戒名が読みとれる。

地蔵像付き供養塔|享保3年

地蔵像付き供養塔|享保3年

幡(はた)を持った地蔵菩薩立像が浮き彫りされている舟型の供養塔。江戸中期・享保3年(1718)造立。地蔵尊の顔の左横に梵字「カ」。銘文は「享保三戊戌」「九月廿四日」のほか、戒名が目視で確認できる。

地蔵像付き供養塔|年代不詳

地蔵像付き供養塔|年代不詳

宝珠と錫杖を持った地蔵菩薩立像が陽刻されている舟型の供養塔。年代不詳。地蔵尊の顔の左横に梵字「カ」。施主名や戒名などが刻まれている。

大日如来

大日如来を主尊とした石塔(光明真言塔)が2基。

大日如来付き光明真言塔|宝永8年

胎蔵界大日如来を主尊とした光明真言塔

大日如来(だいにちにょらい)を主尊とした光明真言(こうみょうしんごん)塔。石塔型式は舟型。江戸中期・宝永8年(1711)造塔。
 
陽刻された大日如来は、法界定印(ほっかいじょういん)を結んでいるので、胎蔵界大日如来(たいぞうだいにちにょらい)。石塔の最頂部には胎蔵界大日如来を表わす梵字「アーンク」が刻まれている。
 
脇銘は「光明真言二百万遍二世大願成就」「奉造立供養大日如来」「宝永八辛卯歳二月八日」「光明真言結衆中敬白」とある。

大日如来は、

真言宗の本尊。宇宙の万物を通じて存在する最高の理知の本体。すべての仏、菩薩(ぼさつ)などの源となる。理を象徴する胎蔵界(たいぞうかい)大日如来と、智を象徴する金剛界(こんごうかい)大日如来との二体がある。(出典)JapanKnowledge,https://japanknowledge.com

大日如来付き光明真言塔|正徳3年

金剛界大日如来を主尊とした光明真言塔

大日如来を主尊とした光明真言塔。石塔型式は舟型。江戸中期・正徳8年(1713)造塔。
 
陽刻された大日如来は、智拳印(ちけんいん)を結んでいるので、金剛界大日如来。石塔の最頂部には金剛界大日如来を表わす梵字「バーンク」が刻まれている。
 
脇銘は「奉造立供養大日如来光明真言一百万遍□□二世大願□□」「正徳三癸巳歳六月吉日」「光明真言結衆中敬白」とある。

如意輪観音

如意輪観音を主尊とした石塔が1基。

念仏供養塔

念仏供養塔

江戸後期・天明4年(1784)造塔の念仏供養塔。石塔型式は舟型。中央に如意輪観音が浮き彫りされている。脇銘は「念仏講中」「天明四辰二月吉日」。
 
十九夜の主尊は如意輪観音であることから、越谷市郷土研究会顧問の加藤幸一氏は、この念仏供養塔は「十九夜念仏塔」(※9)と推定している。

※9 加藤幸一「増林地区の石仏石塔」平成11・12年度調査/令和4年改訂(越谷市立図書館蔵)(2)東福寺、120頁

東福寺の調査はこれで終了