越谷市千間台東にある上間久里閻魔堂の庚申塔と石仏石塔を調べた。場所は、旧日光街道と日光街道が交差する「陸橋入口」から南西50メートルのブロック塀沿いにある。

上間久里閻魔堂

上間久里閻魔堂

閻魔堂の創建は不詳だが、江戸後期・幕府が編さんした地誌『新編武蔵風土記稿』「上間久里村」の項に、「庵三宇、一は阿弥陀、一は地蔵、一は閻魔」(※1)とある。

※1 『新編武蔵風土記稿 第十巻(大日本地誌大系)⑯』雄山閣(平成8年6月20日発行)182頁

上間久里第一自治会館

上間久里第一自治会館

※上間久里第一自治会館(地蔵堂)

今回調査した閻魔堂のブロック塀沿いにある石塔群は、かつては、閻魔堂の北東40メートル先にある上間久里第一自治会館(地蔵堂)にあった。
 
上記、『新編武蔵風土記稿』の「一は地蔵」は、上間久里地蔵堂(現・上間久里第一自治会館)のこと。

上間久里第一自治会館と地蔵堂

地蔵堂と上間久里第一自治会館

上の写真は上間久里第一自治会館と地蔵堂。建物の正面から右手が自治会館で、左手が地蔵堂。本尊の地蔵尊が安置されている。地蔵堂の軒先には、紙垂(しで)が飾られ、鰐口(わにぐち)が吊り下げられている。

上間久里地蔵堂の由来

越谷市郷土研究会の加藤幸一氏は、上間久里地蔵堂の由来について次のように述べている。

江戸時代、上間久里のS氏が、上野東叡山寛永寺にお仕えし、その後、帰郷の前夜、夢枕に日ごろ崇拝していた地蔵尊が立ち、いっしょに連れて帰るようにと告げられた。そこで建立されたのが、その地蔵尊を安置する地蔵堂である。
 
かつては「東叡山観成院常純寄附之、明和八卯三月」(とうえいざんかんじょういん・つねずみこれをきふす、めいわはち・う・さんがつ)と書かれた飾り幕があったという。明和8年は西暦1771年。

※2 加藤幸一「桜井地区の石仏」平成5・6年度調査/平成31年8月改訂「上間久里の地蔵堂」76頁

石塔群

上間久里閻魔堂の石塔群

閻魔堂に戻る。ブロック塀沿いに、庚申塔や墓塔など22基の石仏石塔が並べられている。
 
越谷市郷土研究会の加藤幸一氏によると、「地蔵堂(現・上間久里第一自治会館)の北西側の道路沿いに並べられていた石仏類が、道路の拡張にともない近くのゲートボール場の南西端に移され、さらにこの閻魔堂の外側(ブロック塀沿い)に移転された」(※3)という。

※3 加藤幸一「桜井地区の石仏」平成5・6年度調査/平成31年8月改訂「上間久里閻魔堂」76頁

以上を踏まえて、上間久里閻魔堂の石塔群を見ていく。調査日は、2025年2月4日。

庚申塔

庚申塔

庚申塔は四基。左端にまとめられている。

文字庚申塔

文字庚申塔

向かって左端は文字庚申塔。江戸後期・寛政7年(1795)造塔。石塔型式は山状角柱型。正面の主銘は「青面金剛」。最頂部に瑞雲に乗った日月。左側面の銘は「寛政七卯年」、右側面の銘は「正月吉日」
 
石塔の下の台石正面には陽刻された三猿。三猿の下の台石正面には「講中」と刻まれている。

青面金剛像庚申塔|剣人型

剣人型・青面金剛像庚申塔

左から二番目は、青面金剛像庚申塔。江戸中期・享保16年(1731)造塔。石塔型式は笠付型。
 
笠の部分に陽刻されているのは瑞雲に乗った日月。石塔部分の彫像は、青面金剛像・邪鬼・二鶏。台石の下部に三猿が浮き彫りされている。

剣人型・青面金剛

剣人型・青面金剛

青面金剛は一面六臂(いちめんろっぴ=顔がひとつて腕が六本)の剣人型(けんじんがた)。持物は右手に宝剣、左手にショケラ(人身)、左上手に法輪、左下手に弓、右上手に矛(ほこ)、右下手に矢。

剣人型・合掌型

青面金剛像の多くは、腕が六本(六臂=ろっぴ)で、右手に剣を持ち、左手に「ショケラ」と呼ばれる人身を持つ剣人型(けんじんがた)と、中央の手が合掌している合掌型(がっしょうがた)の二種に大別できる。

脇銘|左側面

脇銘

左側面の脇銘。「奉造立庚申待供養講中為現世安穏淩生善果也」「享保十六辛亥天五月吉祥日」「武州新方領上間久里村」「本領」ほか八人の名前。

脇銘|右側面

脇銘

右側面の脇銘。「天下泰平」「國土安穏」「願以此功徳」「普及於一切」「我等与衆生」「皆共成佛道」

文字庚申塔

文字庚申塔

左から三番目は文字庚申塔。明治12年(1879)造塔。石塔型式は駒型。正面の主銘は「庚申塔」。脇銘は「明治十二年」

青面金剛像庚申塔|合掌型

青面金剛像庚申塔

右端は、青面金剛像庚申塔。江戸中期・明和2年(1765)造塔。石塔型式は駒型。刻像は、最頂部に日月瑞雲(瑞雲に乗った日月)、青面金剛像、邪鬼、三猿。
 
脇銘は左側面に「上間久里村」、右側面に「明和二乙酉三月吉日」とある。台石の正面には、願主・寄進者十数人の名前が刻まれている。

合掌型・青面金剛

合掌型・青面金剛像

青面金剛は一面六臂(いちめんろっぴ=顔がひとつて腕が六本)の合掌型(がっしょうがた)
 
中央の手で合掌。持物は、左上手に法輪、左下手に弓、右上手に矛(ほこ)、右下手に矢。

墓塔・供養塔