2021年2月7日・日曜日。越谷市下間久里にある自家焙煎珈琲店・珈家(かや)でコーヒー教室が行なわれた。定員は3名限定。深煎り・中深煎り・中煎り・浅煎りコーヒーの淹れ方の実演と試飲のほか、ハンドドリップのイロハ、コーヒー生産地と豆の特徴など内容も充実。参加者には好きなコーヒー豆100グラムがお土産としてプレゼントされた。今回は取材という形で参加。当日の様子をお伝えする。

自己紹介

コーヒー教室|自家焙煎珈琲店・珈家(越谷市下間久里)

午後4時。カウンター席でコーヒー教室開始。参加者は三人。全員男性。まずは珈家のマスター・福田さんが自己紹介。お店は2015年3月1日にオープンし、今年の3月で6周年を迎えること、勤めていた大手食肉加工メーカーを退職し、東京・南千住にある自家焙煎珈琲カフェ・パッハのトレーニングセンターで修行を積んだ話などのあと、今日のコーヒー教室の流れについて簡単な説明があった。

こしがやエフエムのパーソナリティーも参加

PWさとしさん(こしがやエフエムのパーソナリティー)

今回は、こしがやエフエムのパーソナリティーを務める PWさとしさん(通称・プリティーさん)も個人的に参加。コーヒー好きを自認する PWさとしさん、コーヒーの道を究めようと参加したそうだ。ちなみに PWさとしさんの「PW」は「プリティ・ワンダフル」の略とのこと。プリティねぇ……(笑)

まずはあいさつ代わりに一杯

ハンドドリップ

「まずはあいさつ代わりにコーヒーを一杯淹れましょう」。マスターが、浅煎りのベレカというコーヒーを産地や豆の特徴などの解説をしながら淹れてくれた。カウンター席に座っていた参加者三人は興味津々の様子。立ち上がって覗き込むようにしながらマスターの淹れるコーヒーに見入っていた。

一杯目のコーヒーはベレカ

エチオピア産コーヒー・ベレカ

テイスティング(試飲)一杯目のコーヒーは、エチオピア産のベレカ。標高約2,000メートル。コーヒー発祥の地といわれるエチオピア・アビシニア高原南部のシダモ地方イルガチェフェ地区で栽培されている最高品質のコーヒー豆で、レモンティーのような柑橘系の香りと酸味が特徴。焙煎度は浅煎りが向いている。
 
コーヒー豆の精製方法は主にふたつある。収穫したコーヒー豆を天日乾燥(または機械乾燥)してから脱穀するナチュラル。もうひとつは、収穫した実の外皮と果肉を取り除いたあと、ミューシレージと呼ばれるヌルヌルした粘液質を洗い流してから乾燥させて脱穀するウォッシュド。このベレカは、ウォッシュドで処理されたもの。

ナチュラルとウォッシュド

ナチュラルは豆独自の風味が出やすいが味の均一さにやや欠け、ウォッシュドは味の均一性はあるが、水を大量に使うので、設備の整った環境下でないと難しい、などの特徴がある。マスターの話だと、ナチュラルのほうが豆の個性を存分に引き出しやすいので、職人として腕をふるう楽しみがある、とのこと。

基礎編

資料

続いての時間は基礎編。コーヒー豆のあれこれ。配付された資料に基づき、主な豆の産地やグレード、焙煎度などの説明があった。コーヒー豆は産地や品種によって風味もまちまちだが、焙煎してからの日数の経過によっても風味が変化していくというマスターの話に、参加者全員びっくり。「焙煎したてがいちばんおいしいというわけじゃないんですね。知らなかった」(PWさとしさん談)

コーヒーの産地は約60か国

コーヒー豆|イルガ・ケシャとイルガ・コケ

コーヒーの栽培はどこでもできるというわけではない。コーヒーの産地は、約60か国あるといわれ、赤道をはさんだ南緯25度、北緯25度のコーヒーベルトと呼ばれる熱帯・亜熱帯地域に集中している。
 
主な産地は、中南米エリアのブラジル・コロンビア・グアテマラ・ニカラグアめコスタリカ・ジャマイカ・パナマ。アジア・太平洋エリアのハワイ・インドネシア・ニューギニア・インド・ベトナム。アフリカ・中東エリアのエチオピア・イエメン・ケニア・タンザニア・ウガンダなど。

珈家のマスター

コーヒーの生産量世界一はブラジルですが、二位はどの国だか分かります? 二位はベトナムです。コーヒーベルトからはずれている日本でも沖縄と小笠原でわずかながらコーヒー栽培が行なわれていますが生産量は希少です。


コーヒー豆の銘柄は「生産地区+農園名」で記されることも多い。たとえばエチオピアのイルガチェフェ地域のケシャ村で採れるのが「イルガ・ケシャ」で、イルガチェフェ地域のコケ村で採れるのが「イルガ・コケ」。パナマのエスメラルダ農園で栽培されているゲイシャ種(パナマ・エスメラルダ・ゲイシャ)は、2004年の国際オークションで、当時の最高落札価格を記録。一躍有名になった。

コーヒー豆のグレード

コーヒー豆

コーヒー豆はグレードは「産地の標高」(産地高度)「粒の大きさ」(スクリーン)「欠点数」(コーヒー豆に石や砂などの異物や欠けた豆などが入っていないか)の三つの要素で評価される。世界基準のようなものはないが、生産国ごとに、この三つの要素に照らし合わせて品質基準を設けている。

標高

コーヒー豆|パナマSHB

産地の標高が高いほど、朝夕の温度差が大きく、品質がすぐれているとされている。涼しい高地で栽培されたコーヒーは実がゆっくりと熟すので、風味が豊かといわれている。産地高度でグレード分けてしているコスタリカやパナマでは、「SHB」(エス・エイチ・ビー)が最高を意味する。

粒の大きさ

ドミニカAA

粒の大きさ(スクリーン)は大粒の豆ほど高品質とされる。たとえばタンザニアでは、6.75ミリメートル以上の豆を「AA」、ケニアでは 7.0ミリ以上の豆を「AA」とし、最高グレードとしている。そのほかドミニカのコーヒーも粒の大きさで品質基準が設けられている。

粒の大きさと欠点数

ブルーマウンテンNo1

ジャマイカでは粒の大きさ(スクリーン)と欠点数でグレード分けしている。ジャマイカを代表するブルーマウンテンの場合、異物の混入が少なくて粒の大きい(欠点数の少ない)最高グレードが、「No1」(ナンバーワン)、ブルーマウンテンNo1 と呼ばれる。

ブルーマウンテンNo1

コーヒー教室の風景

ここで参加者のPWさとしさんがひとこと。「ブルーマウンテンNo1というのは、ブルーマウンテンこそが世界のナンバーワン・コーヒーである、という意味じゃないんですね」。全員、破顔一笑。PWさとしさん、ナイスキャラNo1!

焙煎度

コーヒー豆の焙煎

続いて、焙煎(ばいせん)について。焙煎とは生のコーヒー豆を煎ること。煎って加熱することでコーヒー豆の成分が化学変化を起こし、香りや風味が生まれる。加熱の程度を表わす指標を焙煎度という。焙煎度は「浅煎り」「中煎り」「深煎り」の三つに分けられるが、さらに細かく八段階に分類されることもある。珈家では「浅煎り」「中煎り」「中深煎り」「深煎り」の四段階に分類しているそうだ。
 
コーヒーは、焙煎が浅いほど(焙煎時間が短いほど)酸味が強くなり、焙煎が深いほど(焙煎時間が長いほど)苦味が強調される。豆の種類によって、もっとも個性が引き立つ焙煎度があるので、ケニアなら深煎り、イルガチェフェなら浅煎り、といったように、豆の種類に合わせて焙煎度を変えていく。なかなか奥が深い。

エイジング

インド産コーヒー・モンスーンAA

次にエイジングについて話があった。コーヒー豆は鮮度が命といわれるが、焙煎したてがいちばんおいしいかというとじつはそうではない。焙煎直後のコーヒー豆には二酸化炭素が大量に含まれているので、抽出のさいに大きな泡がじゃまをして、お湯にコーヒー豆の成分が溶けづらく繊細な風味が出にくい。珈家のマスターは「角がとがった味」と表現した。
 
焙煎日から三、四日すると、コーヒー豆のガスがほどよく抜けるので、角が丸くなって、甘みやコクなどの風味が楽しめるようになる。焙煎してから少し寝かせることをエイジングという。焙煎してから三日から五日、一週間、二週間から三週間など、さまざまな意見があるが、焙煎してから三日から五日ほどエイジング期間をおくと、飲みごろになるようだ。

珈家自慢の焙煎機

焙煎機・マイスター

マスターがお店の焙煎機を見せてくれた。東京・南千住の名店「バッハコーヒー」で開発された焙煎機「マイスター」。芯まで火がとおり、煎りムラがないのが特徴。コーヒー豆の個性を最大限に引き出して焙煎できる。値段はウン百万円。マスターが退職金をつぎ込んで購入。珈家を支える屋台骨だ。