今回ぜひとも食べたかったのは
十日後の11月5日・金曜日。またまたパーラー鯉へ。今回ぜひとも食べたかったものがある。それはパーラー鯉のオリジナルメニュー・アレンジフラワー。女性に人気のデザートらしい。
ナポリタンとアレンジフラワーを注文
時間は午後2時20分。今日はまだ昼食をとっていない。おなかもすいているので、まずはナポリタン、食後にアレンジフラワーを注文した。
入口付近に気になる女性客が…
昼食の時間帯を過ぎているので、店内には、ボクと、入口付近のテーブルに、60代前半と思われる女性がひとり、背中を丸め、うつむいて座っている。膝を閉じ、手を膝の上に乗せている。誰かにこっぴどく叱られ、落ち込んでいるような感じだ。いまにも涙がこぼれそうな、そんな雰囲気すらある。ひとごとながら心配だ。
ほどなくして、女性のテーブルに、パーラー鯉の奥さんが、オムライスを運んできた。オムライスを目にしたとたん、女性の表情が一変した。満面の笑みを浮かべ、目は輝き、胸の前で小さく拍手をしている。オムライスを待っている間の、あのしょげたさまはなんだったのか? 心配して損した。
女性はボクの心配などまったく気にかける様子もなく、ルンルン気分で(かなり古いナ)、オムライスを食べ始めた。
と、そこへ――
ナポリタンが運ばれてきた
ナポリタンは昭和の喫茶店の味そのまま。まさに懐かしのナポリタン。言うことなし。麺は細からず太からず。味付けも濃くなく薄くなく。いいあんばい。「これこれ、喫茶店のナポリタンはこの味だよ」という味だ。ハムがたっぷり入っているのもうれしい。ピーマンとタマネギが、とても細かく刻んであるので、麺を食べるときに、ナポリタンの味付けをじゃましないのもいい。
時代の流れに媚びることなく昔ながらの味を守り続けているパーラー鯉のナポリタンに星三つ!
ナポリタンの味の余韻にひたっていると
お待ちかねのアレンジフラワーが運ばれてきた。
これがパーラー鯉のアレンジフラワーだ
アレンジフラワーは、パーラー鯉のオリジナルメニューで、円形のデザートグラスに、カスタードプリン・生クリーム・サクランボ・アンゼリカ・バナナ・パイナップル・みかん・バニラアイス・いちごアイスが、アレンジフラワーのように盛り付けられている。見てるだけで眩しくてクラクラしちゃう。
恋の花園
パーラー鯉のアレンジフラワー。鯉の花園ならぬ恋の花園であった。
次は何を食べようか…
昭和から平成へ、平成から令和に。時代は流れ、デパートの最上階から大食堂が消え、喫茶店がカフェになり、スパゲティはパスタと名を変え、デザートや甘味は十把(じっぱ)ひとからげにスイーツと呼ばれるようになった。
ところがどっこい。パーラー鯉は、世の中の移り変わりに媚(こ)びることなく、開店当時、昭和の味を守り続けている。古いのではない。それが伝統というものだ。パーラー鯉のご主人と奥さんには、この伝統の味をいつまでも守り続けていただきたいと切に願う。
今度はいつ来ようかな
アレンジフラワーを食べ終え、早くも頭の中で次に注文するメニューをあれこれ考える。バナナパフェも食べたい、フルーツサンドも食べてみたい、ハンバーグは絶対に食べなくちゃ……。これはもう通い続けて、全種類食べ尽くすしかないな。といってもパーラー鯉のメニューは飲食あわせて115種類もある。
まずはパフェを全制覇するか。
パーラー鯉閉店
2023年7月30日。パーラー鯉はご主人が急逝したため閉店しました。ご主人のご冥福を心からお祈りいたします。まだ奥さまもどうかいつまでもお元気で……。
2023年7月30日。北越谷西口のパーラー鯉のご主人が急逝。昭和55年(1980)創業のパーラー鯉は閉店した。もうあのパフェや料理が食べられないのかと思うとさみしいかぎり。夫婦二人三脚で43年間、地元に根ざしたパーラー鯉をしのぶ……。