ずっと気になっているんだけど、なかなか入るきっかけがなくて……っていうお店、ありませんか? 越谷に引っ越してきて42年。ボクにはそんなお店が何軒かある。そして、意を決し、そのお店のひとつに行ってきた。店の名前はパーラー鯉(こい)。東武伊勢崎線・北越谷駅西口から100メートル。昭和レトロな喫茶店だ。
珈琲と軽食の店 パーラー鯉
2021年10月24日。大袋で用事をすませ、東武伊勢崎線に乗って北越谷駅で降りた。時間は午後2時半。北越谷駅の西口ロータリーから北越谷停車場線(埼玉県道405号)を直進。最初の十字路を越えた先、左手にあるのが、パーラー鯉だ。目印は、黄色い文字で「珈琲と軽食の店 パーラー鯉」と入った緑色の軒先テント。軒先テントも建物も古びているが、すたれた感じではない。どことなく昭和のにおいがする。
懐かしのサンプルケース
入口の斜め前に、ナント、懐かしのサンプルケースが、あ~るじゃありませんか。四段に仕切られて、おいしそうな料理とデザート・甘味類のサンプルが並んでいる。
上段には、オレンジフロート、フルーツパフェ、チョコレートパフェ、フルーツクリームあんみつ。二段目は、アレンジフラワー・フルーツサンド・バナナスプレー、ミニバーガー、ミックスピザ。三段目は、チキンソテー、ハンバーグ、グラタン。四段目には、カレーライス、ピラフ、オムライス、ナポリタン。
どれもそそられる。食べたいものばっかりだ。これは困った……。ま、今日は昼食はすませてきたので、コーヒーと軽食、それとパフェは絶対食べよう、と、いちおうの注文の方向性を決め、店に入った。
店内は昭和
店内には、50代らしき夫婦一組、30代と思われる夫婦一組、それに60代後半ぐらいの男性が一人。席数は、四人掛けテーブルが六、二人掛けが二。ボクは、奥の四人掛けのテーブル席に座った。木製のテーブルと椅子。明るさを落とした照明。この落ち着いた空間は、まさに昭和の喫茶店。座っているだけでくつろげる。
店の奥さんと思われる年配女性が、お冷やとおしぼりを持ってきてくれた。受け答えや身のこなし、接客の一挙手一投足から、この道数十年という雰囲気が伝わってくる。
メニューの数にびっくり!
テーブルの脇にメニュー表があった。どれどれ、どんなメニューがあるのかな、見てみっか、と、メニュー表を見てびっくり。種類がはんぱじゃない。表と裏にびっしりとメニューが書かれている。
飲み物・デザートメニュー
飲み物は、コーヒー・紅茶・フルーツジュース・生ジュース・セーキ・スカッシュ・フロート類で43種類。デザートは、アイスクリーム・パフェ・オリジナルデザート・甘味類が24種類。
食事メニュー
食事メニューは、軽食が14種類、卵料理が4種類、サイドメニューが3種類、ピラフやスパゲティなどの一品料理が18種類、肉のメニューが9種類。
ナント、パーラー鯉のメニューは全部で115種類もある。
「珈琲と軽食の店 パーラー鯉」ということであったが、これはもう「軽食の店」どころではない。食堂と洋食屋と喫茶店と甘味処を合わせたようなメニューの数だ。お子様ランチがあれば、デパートの大食堂にも引けを取らない。
店に入る前、サンプルケースの前で何を食べようかと、ひとしきり悩んだのに、メニュー一覧を見て、ますます何を食べるか、悩みが増した。
前のテーブル席の30代と思われる夫婦は、奥さんが食後のチョコレートパフェ、ご主人はコーヒーを飲んでいる。反対側の壁際の席に座っている50代らしき夫婦の奥さんは、ナポリタン、ご主人は、カレーライスを食べている。どれもうまそうだ。
コーヒー・ミックスサンド・フルーツパフェを注文
と、そこへ店の奥さんが注文をとりにきた。もはや悩んでいる時間はない。「珈琲と軽食の店 パーラー鯉」にふさわしい、コーヒーとミックスサンド、そしてフルーツパフェをいただくことにした。
アレンジフラワーって何だ?
注文を終え、料理を待つ間、あらためてメニュー一覧を眺める。それにしてもすごい数だ。よく見ると、飲み物には昆布茶、甘味にはおしるこ、サイドメニューには、いそべ巻きまである。そして、オリジナルデザートの「アレンジフラワー」と「フロンティア」というのがとっても気になる。アレンジフラワーって何だ?
ほどなくして、ミックスサンドとコーヒーが運ばれてきた。
パーラー鯉のミックスサンドとコーヒー
ミックスサンドは、台形にカットされたパンに、卵とハムとキュウリのサンドイッチが一組になったものが、四組、丸い皿に載っている。皿の中央には、銀色のアルミ製カップにカットされたパイナップルとサクランボが入っている。そして緑色のプラスチック製のつまようじ。白・黄・赤・緑・銀…。全体の色合いがいい。見てるだけでワクワクしてくる。
やっぱり喫茶店のサンドイッチは台形が王道
サンドイッチが台形というのもこれまたいい。最近は三角形にカットされたものが主流だが、やっぱり喫茶店、とくに昭和レトロな喫茶店のサンドイッチは、台形にカットされていたほうが、しっくりくる。
コーヒーはていねいに淹れてある
コーヒーは、可もなく不可もなし、といったところだが、ていねいに淹れてある。昔の喫茶店のコーヒーだ。苦味とコクのバランスがいい。砂糖とミルクも供されていたが、そのまま飲んだほうがおいしいので、ボクはブラックでいただいた。
とそこへ――
フルーツパフェが来た~!
恋のフルーツパフェ
これこれ、これですよ、フルーツパフェはこうじゃなくちゃ。色合いといい、盛り付け方といい、まさに昭和のフルーツパフェだ。
うさぎさの飾りきりにしたリンゴに、バナナとみかん。バニラアイスにオレンジシャーベット。パイナップルとモモの上にはデコレーションされた生クリーム。生クリームには真っ赤なサクランボが載っている。ナント、サクランボの隣りに、黄緑色のアンゼリカを発見!なつかしいな~。パフェにアンゼリカを使ってるお店はもうほとんどないんじゃないかな。
そしてパフェグラスの底には緑色のメロンシロップ。これもまたフルーツパフェに彩りを添えている。最後に、少し溶けたバニラアイスとメロンシロップをかきまぜ、緑色に染まったメロン味のバニラアイスをいただく。もうたまりませんな~
パーラー鯉のフルーツパフェにワクワク、ドキドキ。「鯉」のフルーツパフェならぬ「恋」のフルーツパフェに大興奮したボクは、興奮をしずめるため、コーヒーのおかわりをお願いした。
コーヒーをおかわり
コーヒーを待つ間、何気に店のレジスターを見たら、横にマッチ箱が数個置いてある。もしかして広告マッチ? コーヒーを運んできた奥さんに聞いたところ「うちの広告マッチです」とのこと。
これまた懐かしい。昔、昭和の時代には、喫茶店には必ず屋号がデザインされた広告マッチが置いてあって、タバコを吸う人も吸わない人も頼めばもらえた。
「うちのマッチも、もうあそこに置いてあるだけですが、よかったら差しあげますよ」と、奥さん。「ホントですか!ぜひいただきたいです」。ボクはタバコは吸わないが、ありがたくちょうだいした。茶色のマッチ箱に白文字で「パーラー鯉」とデザインされた、すてきな広告マッチだ。うれしいな~
どうしてパーラー鯉って屋号にしたんですか?
それにしても「パーラー鯉」という屋号は、なかなか変わっている。「ラブ」(Love)の「恋」ではなく、「カープ」(Carp)の「鯉」だ。奥さんに聞いたところ「主人の父親が鯉好きだったので」という返事が返ってきた。なるほど。納得。
もしもご主人のお父さんが「鮒」が好きだったら「パーラー鮒」、ドジョウが好きだったら「パーラーどぜう」、はたまた鯰(なまず)が好きだったら「パーラー鯰」になっていたのかもしれないな。そう思うと、鯉好きのお父さんでよかった。
北越谷に店をかまえて41年
パーラー鯉は、昭和55年(1980年)に、この場所に店をかまえたそうだ。今年で41年目になる。ちなみに、この場所(北越谷)に移ってくる前は、台東区の入谷(いりや)で、10年ほど(同じ屋号で)やっていたとのことなので、ご主人とパーラー鯉を始めて、かれこれ50年以上になる。開店してから10年間は、お客さんも多かったので、2階も使っていたそうだが、30年前に、2階は使わなくなったとのこと。
北越谷にこんな歴史のあるお店があったとは……。驚き桃の木山椒の木。フルーツパフェは560円。コーヒーは320円。ミックスサンドは480円。パーラー鯉は、お値段もメニューも昭和を守り続ける希有なお店だった。再訪決定!
次は何を食べようかな
店を出た瞬間、サンプルケースの横の壁に掛かっている「セットサービス」メニューが目に止まった。スパゲティセット、カレーライスセット、オムライスセット、チキンライスセット、ドライカレーセット、ハンバーグセット、メンチカツセット、ポークカツレツセット……。
どれもうまそうなセットメニューだ。次は何を食べようかな。サンプルケースとセットメニューを交互に眺め、あれこれ悩む。チキンライスとメンチカツもそそられるが、ポークカツレツセットとチョコレートパフェを頼むか。次回が楽しみだ。
パーラー鯉(越谷市北越谷)営業情報
パーラー鯉の住所は埼玉県越谷市北越谷41。郵便番号は 343-0026。定休日は火曜日と水曜日。営業時間は午前9時から午後7時まで。電話番号は 048-977-3167 。最寄駅は北越谷駅。場所は、北越谷駅西口ロータリーから100メートルほど行った先の左手。ソフトバンク北越谷の隣り( 地図 )。駐車場はない。並びにコインパーキングがある。路上駐車は厳禁。