石仏石塔
自治会館入口脇

自治会館の入口脇(道路沿い)に、記念碑・名号塔・力石が並んでいる。
 
記念碑(公民館並境内整備記念碑)には、昭和57年(1982)に、西組自治会館の改築と、境内の整備を終えた旨が記されている。
名号塔

記念碑の向かって右側は名号塔(みょうごうとう)。江戸前期・寛文9年(1669)造塔。構造は上から宝珠・笠・塔身・基礎。
 
正面の最頂部に、阿弥陀三尊を表わす梵字(種子=しゅじ)。中央はキリーク(阿弥陀如来)、向かって左はサク(勢至菩薩)、向かって右はサ(観世音菩薩)
 
中央に「南無阿弥陀仏」の六文字(名号)が刻まれている。
左側面

左側面(向かって右側面)の銘。
 
最頂部。阿弥陀三尊の種子。向かって左からサク(勢至菩薩)、キリーク(阿弥陀如来)、サ(観世音菩薩)
 
種子の下には、阿弥陀仏の四十八願(しじゅうはちがん)が刻まれている。
 
設我得仏
十方衆生
至心信楽
欲生我国
乃至十念
若不生者
不取正覚
唯除五逆
誹謗正法
 
四十八願とは、阿弥陀仏が修業時代に、いっさいの衆生(しゅじょう=生きとし生けるもの)を救うために立てた四八の誓願のこと。
 
四十八願の下の銘は、「千日惣廻向有無縁等導師日照山光明寺西教院」「願主 □圓 □誉圓内 傳誉宗心 浄圓」
 
「願以此功徳」「平等施一切」「同発菩薩心」「往生安楽国」「寛文九己酉年」「十月十五日」「開闢大蓮舎乗誉真阿詫道上人大和尚」「自他」「乃至法界」「廻向順道舎了応随誉無入大和尚」「平等利益」「敬白」
右側面

右側面には、法名や俗名などがびっしり刻まれているが、風化がひどく、判読不能。最頂部には阿弥陀三尊の種子、サク(勢至菩薩)キリーク(阿弥陀如来)サ(観世音菩薩)が刻まれている。
背面

裏側面にも法名や俗名などがびっしり刻まれているが、風化がはげしく、解読不能。最頂部には阿弥陀三尊の種子、サク(勢至菩薩)キリーク(阿弥陀如来)サ(観世音菩薩)
銘文の出典
名号塔に刻まれている銘は一部、読みとれない文字もあったので、越谷市郷土研究会・加藤幸一氏の調査報告「荻島地区石仏」平成14年度調査/平成29年3月改訂(越谷市立図書館所蔵)「西組自治会館」(17.名号塔)75頁に従った。
力石

力石(ちからいし)。年代不詳。風化が進んでいて、「□□貫目」「西新井」という銘が、かろうじて読みとれる。
 
力石とは、江戸時代から明治時代にかけて、力比べや体を鍛えるために使われた石のこと。村いちばんの力自慢を競ったり、村落対抗の力くらべなど、娯楽としても盛んだった。
 
力持ち大会で優勝した人の名前や持ち上げた石の重さなどを刻んで神社や寺院に奉納された力石も見られる。
墓塔
主尊の像容が目をひいた墓塔を四基紹介する。区画内には立ち入らずに外から撮影するにとどめた。
聖観音

聖観音を主尊とした女性の墓塔。江戸前期・寛文8年(1668)建立。
地蔵菩薩

地蔵菩薩を主尊とした男児の墓塔。江戸中期・宝永3年(1706)建立。
如意輪観音

如意輪観音を主尊とした女性の墓塔。江戸前期・寛文13年(1673)建立。
如意輪観音

如意輪観音を主尊とした女性の墓塔。江戸中期・享保17年(1732)建立。
場所

西組自治会館の住所は、埼玉県越谷市西新井810( 地図 )。郵便番号は 343-0855。場所は、西教院(さいきょういん)の西南西250メートル。越谷街道の南脇。
参考文献
本記事を作成するにあたっては、関係書籍や調査報告書も参考にした。参考にした文献を以下に記す。引用した箇所については記事中に引用箇所を明記した。
加藤幸一「桜井地区の石仏」「荻島地区石仏」平成14年度調査/平成29年3月改訂(越谷市立図書館所蔵)
『新編武蔵風土記稿 第十巻(大日本地誌大系)⑯』雄山閣(平成8年6月20日発行)
『越谷市金石資料集』越谷市史編さん室(昭和44年3月25日発行)
日本石仏協会編『石仏巡り入門―見方・愉しみ方』大法輪閣(平成9年9月25日発行)
日本石仏協会編『新版・石仏探訪必携ハンドブック』青娥書房(2011年4月1日発行)
庚申懇話会編『日本石仏事典(第二版新装版)』雄山閣(平成7年2月20日発行)





