諸堂

薬師堂と五智如来堂

境内の南にある二つの堂舎は薬師堂と五智如来堂。向かって左が薬師堂、右が五智如来堂。
 
もともとは埼玉鴨場・正門の東側、浄光寺が管理する堂地内にあったが、管理上の都合で、薬師堂の薬師大佛や、五智堂の五智如来像その他、宝篋印塔などを浄光寺境内に移し、平成2年(1990年)に、境内地を解放した。

旧・大房薬師堂

旧・大房薬師堂

昭和60年(1980年)ごろの旧・大房薬師堂(※3)

※3 出典:越谷市デジタルアーカイブ( 大房薬師堂

旧・五智如来堂

旧・五智如来堂

昭和60年(1980年)ごろの旧・五智如来堂(※4)

※4 出典:越谷市デジタルアーカイブ( 大房薬師堂境内の五智如来堂

その後、平成9年(1997年)、浄光寺の本堂新築および境内地の整備にともない、二宇そろって、この場所に新たに建立された。

薬師堂

薬師堂|浄光寺

もとの場所にあった旧・薬師堂(大房薬師堂)は平安初期・大同2年(807)創建と伝えられ、浄光寺が管理していた。大房薬師堂には次のような伝説が残されている。

左甚五郎と薬師堂

江戸前期の名工・左甚五郎が、日光東照宮造営のために日光に向かう途中、夕立にあい、雨宿りのために古びた薬師堂で雨宿りをした。甚五郎は「一夜の恩義」として、一本のケヤキの木で新しいお堂を一夜にして建立し、立ち去った。

本尊は薬師如来

寺額|薬師堂

堂内に安置されている本尊は、大房薬師堂から遷座(せんざ)された、木造の薬師如来坐像。高さ3メートル。直径2.5メートルの蓮華台(れんげだい)の上で両脚を組んで座っている。
 
越谷ではいちばん大きな薬師様で、台座の両脇には日光菩薩と月光菩薩、薬師如来像の左右には、薬師様を守護する12尊の仏尊が、6尊ずつ並んでいる。
 
地元では、目の薬師様として親しまれ、旧・薬師堂(大房薬師堂)では、かつて、4月8日の縁日(薬師様の日)には、露店商が参道を埋め、旅芸人や紙芝居などが催され、多くの参拝客でにぎわったという。

五智如来堂

五智如来堂|浄光寺

五智如来堂。お堂には、江戸中期・享保3年(1718)から同5年(1720)にかけて奉納された、青銅製の五体の如来立像が安置されている。薬師堂とともに人々の信仰を集めてきた。
 
五智如来像の蓮台に刻まれた施主銘をみると、江戸安針町(あんじんちょう=現在の日本橋)・草加町・瀬崎村・大房・大林・大沢などの講中(※5)が名を連ねているので、広範囲にわたって信仰されていたことがうかがわれる。

※5 講中(こうじゅう)…寺社に参詣する人々の仲間

五智如来立像

五智如来立像|浄光寺

お堂に並んでいる五智如来。左から阿閦(あしゅく)如来・薬師如来・大日如来・阿弥陀如来・釈迦如来。安産や眼病に霊験あらたかな仏様として、5月8日の縁日には、旧・五智如来堂に参詣者が群衆したという。

越谷市の指定文化財

五智如来立像|浄光寺

如来像の高さは約1.6メートル。ほぼ原形のまま保存されている。青銅製の仏像は例が少なく、貴重な鋳造物として「銅像 五智如来立像 五軀」の名称で、越谷市の有形文化財(彫刻)に指定されている。

無縁堂

無縁堂

無縁堂。平成9年(1997年)、境内地の整備にともない新築された。親族や縁者がいなくなった仏を安置してある。お堂の前では地蔵菩薩が無縁仏を守っている。

小祠

小祠

無縁堂の斜め前に小さな石祠(せきし)が置かれている。風化と劣化が進んでいて、主尊や年代などは確認できない。

二基の石塔

五智如来堂の脇に二基の石塔が置かれている。もともとは大房薬師堂の堂地内と道路(旧日光街道)脇にあったものだが、薬師堂の遷座にともなって、この場所に移された。

宝篋印塔

宝篋印塔|浄光寺

旧・薬師堂(大房薬師堂)にあった宝篋印塔(ほうきょういんとう)。江戸中期・享保16年(1731)造立。宝篋印塔とは「宝篋印陀羅尼」(ほうきょういんだらに)というお経を納めた経典供養塔。

猿田彦大神文字塔

猿田彦大神文字塔

猿田彦大神文字塔。江戸後期・天保2年(1831)造立。正面の主銘は「猿田彦大神」、右側面には「岐太神」(※6)と刻まれている。台石には寄進者の名前が見える。

※6 岐太神(くなどおおかみ)…「ふなどのかみ」「くなどのかみ」などとも呼ばれている。道の分岐点に立って悪霊の侵入を防ぎ、旅人の安全を守る神。この文字塔は、もともとは旧日光街道から旧・薬師堂に通じる角地にあった。猿田彦大神(さるたひこおおかみ)も旅の安全を守る神なので、この石塔は、道祖神として建てられたものと思われる。

参詣情報

浄光寺|越谷市北越谷

浄光寺の住所は、〒343-0026 埼玉県越谷市北越谷4-8-5( 地図 )。電話番号は 048-974-4661。最寄駅は東武伊勢崎線の北越谷駅。西口ロータリーから北越谷停車場線を直進。250メートル先の右側に入口がある。
 
車の場合は、草加バイパス・神明町交差点から埼玉県道405号(北越谷停車場線)を直進。元荒川に架かる新明橋を渡った約400メートル先、左側。駐車場は参道と境内にある。墓地内は墓参者以外は立入禁止。

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参考文献

参考文献

熊野山観音院浄光寺(2002)『古梅園100年 浄光寺つれづれ』中央大学生活協同組合出版局.
財団法人埼玉県佛教会(2001)『埼玉県寺院全集 埼玉のお寺』千秋社.
越谷市史編さん室(1979)『越谷ふるさと散歩(上)』越谷市史編さん室.
加藤幸一(2015)「平成9.10年度<大袋地区の石仏>平成27年12月改訂」越谷市立図書館所蔵.
日本石仏協会(2011)「新版・石仏探訪必携ハンドブック」青砥書房.
日本石仏協会(2000)「石仏巡り入門―見方・愉しみ方」大法輪閣.