稲荷神社|谷中町二丁目
続いて訪ねたのは、越谷市谷中町二丁目にある稲荷神社。住所は埼玉県越谷市谷中町2-321。
地元では下組(しもぐみ)の稲荷神社とも呼ばれている。越谷市郷土研究会・顧問の加藤幸一氏によると「この稲荷神社は、旧・谷中村の下組(谷中町二丁目あたり)で管理している」(※7)という。
※7 加藤幸一「出羽地区の石仏」平成15年度調査/平成28年4月改訂(越谷市立図書館蔵)「旧谷中村の石仏」41頁
庚申塔
境内の石仏は一基。石鳥居の横に青面金剛(しょうめんこんごう)を主尊とした庚申塔がある。江戸後期・文化10年(1813)造塔。石塔型式は兜巾型(ときんがた)。
正面
正面の最頂部には「日月」、中央には「青面金剛像」、青面金剛像の下には「邪鬼」、最下部には「三猿」が陽刻されている。
左側面
左側面の脇銘は「天下泰平国土安穏」「文化十癸酉十月吉日」
右側面
右側面には「谷中村講中」(やなかむら こうじゅう)と刻まれている。
青面金剛
青面金剛の姿は、一面六臂(いちめんろっぴ=顔がひとつで腕が六本)。髪は炎髪(えんぱつ)。炎のように逆立っている。顔は忿怒相(ふんぬそう)。怒りの形相をしている。
持物(じもつ)は、左上手に法輪、左中手に女人(ショケラ)、左下手に弓。右上手に三叉鉾(さんさぼこ)、右中手に剣、右下手に矢。
邪鬼
青面金剛に両脚で踏みつけられているのは邪鬼。
三猿
邪気の下にいるのは三猿。向かって左から見ざる・言わざる・聞かざる。
台石
台石の正面・左側面・右側面には寄進者の名前が刻まれている。正面12人、左側面7人、右側面7人。
境内の風景
続いて境内の風景を紹介する。石畳の参道は、25メートルほどの長さ。参道をはさんで左手にはソメイヨシノ、右手には早咲きの河津桜が植えられている。今回の調査年月日は、2023年3月16日。河津桜は見ごろを終え、ソメイヨシノは開花前だった。
一の鳥居
参道入口にある一の鳥居は石鳥居。様式は明神(みょうじん)系。額束はあるが神額は掲げられていない。柱のうしろに「谷中組 下組一同」「昭和□□年 初午 建立」と刻まれている。建立年は文字がすり減っていて読みとれない。
二の鳥居
社殿手前の二の鳥居は朱塗りの明神鳥居。神額は架かっていない。建立年代は確認できないが、朱塗りの状態がきれいなので、比較的新しい年代に建てられたと思われる。
社殿
銅板葺き格子戸囲いの神殿は小さいながら古さは感じない。部分的に補修がなされている。社殿の正面上部には、紙垂(しで)が付けられた注連縄(しめなわ)が張られ、鈴が三つと、鈴緒(すずお)が吊られている。
残しておきたい風景
神社の西に見える校舎は埼玉県立越谷総合技術高等学校。神社の南側には田園風景が広がっている。谷中周辺も宅地化が進んでいるので、こうした田園の景色は、残しておきたい越谷の風景だ。