徳川家康と越谷
日光街道あれこれ
江戸時代の越ヶ谷宿・大沢橋周辺の絵図(※4)
※4 清水秋全「武奥増補行程記」(12巻[2])…「国立国会図書館デジタルコレクション」(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2577825/15)より転載
日光街道の正式開通
日光街道の正式開通に関する正式な記録はありませんが、慶長7年(1602)に奥州道に宿駅制度がしかれ、慶長17年(1612)に、街道整備のために大沢忠治郎元雄が越谷に派遣されていますので、だいたいこのあたりかと思われます。
しかし、いっせいに整備されたのではないようです。
その後も寛永12年(1635)に参勤交代制がしかれ、寛永13年(1636)に、日光東照宮の竣工などを通じて、整備されていったものと思われます。
ほんとうは日光道中
日光街道は、ほんとうは「日光道中」(にっこうどうちゅう)といいます。正徳6年(1716)に幕府によって五街道の呼称の統一がはかられました。海に関係ない道は「道中」(どうちゅう)。街道(海道)という名称は使ってはいけないと。
日光街道の起点は、もちろん日本橋。千住・草加・越谷・春日部をへて、鉢石(はちいし)までの20宿(21宿という説もあります)を通称、日光道中と呼びます。その先、白沢から白河までの10宿を奥州街道と称します。
里数
蒲生の一里塚(埼玉県指定史跡)
日本橋から越谷までの里数(りすう)は、2里(8キロ)、日本橋から千住は2里15町(9.5キロ)、千住草加が1里30町(7キロ)、日本橋から越谷までは、おおよそ6里9町(24.5キロ)でございます。
一里塚
街道の一里(約4キロ)ごとに目印として築かれた塚を一里塚(いちりづか)と申しますが、日本橋から越谷までの間には 7箇所ありました。①浅草(雷門あたり)②千住(東京学芸大付近)③六月(足立区島根)④草加(吉町あたり)⑤蒲生⑥越谷(大橋手前)⑦下間久里
下の図は、寛永4年(1751)に著わされた「武奥増補行程記」という絵図でございますが、そこに、大橋(現在の大沢橋)、荒川(現在の元荒川)、一里塚などが描かれています。
江戸時代の大沢橋周辺
江戸時代の越ヶ谷宿・大沢橋周辺の絵図(※4)
※4 清水秋全「武奥増補行程記」(12巻[2])…「国立国会図書館デジタルコレクション」(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2577825/15)より転載
越谷? 越ヶ谷?
「こしがや」は、「越谷」と「越ヶ谷」、ふたつの表記がありますが、江戸時代には、家康の文書にも「越谷」とあり、好きなように使っていたようです。明治になってからは「越ヶ谷」が基本で、戦後の町村合併(昭和29年〈1954〉)以降は「越谷」です。
家康が越谷に残してくれたもの
最後に、家康が越谷に残したものを列挙いたします。時間の都合で説明は省略させていただきますが、興味があるかたは、一箇所でも二箇所でも、お時間があるときに訪ねていただき、家康に思いをはせていただければ幸いでございます。
日光街道
木下半助商店(旧日光街道・越ヶ谷宿)
街道・宿場・宿場町・一里塚・立場の名物・赤山街道
有名人
越谷吾山供養墓石(天嶽寺)
◇方言学者・俳人…越谷吾山◇国学者…山崎長右衛門・小泉市右衞門・町山(松山)善兵衛◇植物学者…有瀧龍雄◇墨子…大塚伴鹿◇史学者…中山榮子
御朱印寺
「浄山寺の朱印状」案内板(浄山寺)
大聖寺・林西寺・天嶽寺・観音寺・照蓮院・迎摂院(こうしょういん)・浄山寺
奉納品
徳川家康公垢付の御夜具(大聖寺所蔵)
徳川家康公垢付の御夜具と家康公奉納の太刀(大聖寺)
その他
遠藤家の土蔵(旧日光街道・越ヶ谷宿)
越ヶ谷御殿(跡)・元荒川の流路変更(大袋と花田)・新田開発・蔵造り
最後に
来年(2023年)の1月から家康を主人公にした大河ドラマ「どうする家康」が始まります。見るさいに、今日のお話を思い出していただき、家康は越谷の基礎をつくってくれたヒトなんだ、という視点で見ていただきますと、また違ったおもしろさがあると思います。
今回は、「徳川家康と越谷」と題しまして、家康と越谷について申しあげたしだいでございます。
日光街道を歩いた人たち|宮川進
平成22年度こしがや文化芸術祭で宮川氏が講演した「日光街道を歩いた人たち」のレジュメがある。リンク先を以下に記す。
http://koshigayahistory.org/313.pdf
宮川進氏の略歴
昭和14年(1939年)生まれ。滋賀県近江八幡市出身。大阪市立大学法学部卒。安田信託銀行(現・みずほ信託銀行)、埼玉りそな銀行に勤務。2005年から10年余、NPO法人越谷市郷土研究会の会長を務める。現在、こしがや市民活動連合会副会長(広報兼任)。著書に埼玉県の主要な古墳を紹介した『埼玉の古墳めぐり謎とロマンの70基』(さきたま出版会)がある。
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2023年1月8日から始まるNHK大河ドラマ「どうする家康」の放送を記念して、2022年11月、越谷市北越谷地区センター・公民館主催「令和4年度・歴史探訪講座」の中で「家康と私たちの越谷」と題したお話会が行なわれた。じつは家康は越谷が大好きだった――。