チャーシューワンタンメン

チャーシューワンタンメンと小皿料理

高柳亭の麺類メニューは全部で23種類ある。いちばん安いのがワンタンで550円。続いてラーメン・塩ラーメン・もやしそば・タンメン・焼きそばが600円。そしていちばん高いのがチャーシューワンタンメンで900円。言ってみれば、チャーシューワンタンメンは、高柳亭麺類番付の横綱といえる。

高柳亭麺類番付の横綱

チャーシューワンタンメン

土俵に上がった高柳亭のチャーシューワンタンメンは威風堂堂としている。気品すら感じる。どっしり構えた端正な姿は昭和の名横綱・双葉山をほうふつさせる。スープは昔ながらの中華そばの味だ。やさしくほっとする。そして懐かしい。
 
高柳亭のチャーシューワンタンメンは、高柳亭麺類メニューの横綱と呼ぶにふさわしい一品である。

マーボーラーメン

マーボーラーメン

高柳亭の麻婆豆腐はボクが好きな料理のひとつ。麻婆豆腐は、中華料理人の故・陳建民(ちんけんみん)さんが、1970年代にNHKの『きょうの料理』で、日本人の味覚に合うようにアレンジしたものを紹介して広まった。ボクはそのテレビを偶然見ていた(20代前半だった)。高柳亭の麻婆豆腐は、陳建民さんの麻婆豆腐をほうふつさせる。
 
その麻婆豆腐を素ラーメンにのせたのがマーボーラーメンだ。

妙味!マーボーラーメンライス

マーボーラーメン

さて、ボクは高柳亭でマーボーラーメンを食べるときは半ライスもいっしょに頼む。まず、麺を先に食べる。続いて半ライスをどんぶりに入れ、麻婆豆腐とよくからませたら、レンゲですくって食べる。麻婆豆腐…五、ご飯…五の割合がいちばんおいしい。
 
高柳亭のマーボーラーメンライス、まさに妙味!

担々麺

担々麺と炒飯

テーブルに座って今日は何を食べようかなと思ったら、厨房上の壁に「担々麺」と書かれた黄色い張り紙が目に入ったので、担々麺と炒飯をいただいた。
 
開店時間の11時ちょうどにお店に入ったが、今日は祭日とあって、出前を注文する電話が、次々とかかってきた。「麻婆ラーメンと肉野菜定食をご飯大盛りで。二丁目の○○さんですね」「ミックスフライ定食にオムライスを二つ。はいわかりました」……。
 
そこに高齢の夫婦が、お店にやってきて、ボクの隣のテーブルに座った。奥さんはタンメンとすぐに注文が決まったが、ご主人のほうはメニューとにらめっこしてる。どうやらラーメンセットで、カレーライスを付けるかチャーハンを付けるかで、迷っているようだ。
 
奥さんの「どっちだっていいでしょ! 早くしてよ、これからロヂャースにも行くんだから!」の声にせかされ、ご主人はラーメンとカレーライスのセットを注文した。
 
と、ご主人が、チャーハンを食べるボクを見て、(しまった、カレーライスじゃなくて、やっぱりチャーハンにすればよかった)というような視線をボクとチャーハンに送ってきたが、奥さんの「あんた、今朝、薬飲んだの?」の声に、「ああ」と弱々しく返事をしながら視線をボクから奥さんのほうに移したので、ボクはほっとして、チャーハンを食べ続け、担々麺のスープを飲み干し、高柳亭をあとにした。

担々麺は完成度が高い!

担々麺

さて、肝心の高柳亭の担々麺の味だが、町中華のタンメンは分かるけど、タンタンメンはどうなのかな、それなりの味かな、と思ったけど、ところがどっこい、これがまた専門店に匹敵するというか、互角というか、勝るとも劣らぬというか、スープのコクとうま味もしっかりあって、なかなか完成度の高い一品であった。
 
ラーメンセットでカレーライスにするかチャーハンにするか迷っていたあのご主人にも担々麺をすすめてあげたいが、そうすると、タンタンメンにしようかタンメンにしようか迷いそうだからやめておこう。

ワンタン

ワンタン

ワンタンは、ラーメンの麺の替わりにワンタンが入っている。別の言い方をすると、ワンタンメンの麺が入っていないのがワンタンだ。
 
なのでスープと具はラーメンと変わらない。シナチク、チャーシュー、ナルトにワカメに刻みネギ……。
 
ワンタンは思ったよりもたくさん入っているが、ワンタン単独で食べるとなると、ちょっとものたりない。もう一品、追加したくなる。

ワンタンは恋女房

ワンタンとチキンライス

ボクの場合、ワンタンといっしょに食べるのはチキンライス。チキンライスとワンタンとの相性はかなりいい。チャーハンとの組み合わせも捨てがたいが。
 
ワンタンは野球における捕手のような存在だ。投手であるメイン料理のよいところを引き出す女房役といえる。それも投手との相性が、かなりいい恋女房である。
 
読売ジャイアンツでいえば、チキンライスがメルセデス投手で、女房役の小林捕手が、ワンタンだ。
 
ただし、小林選手とワンタンに、ひとこともの申すとすれば、どちらも一選手、一料理として、レギュラーに定着できるよう、奮起をうながしたい。

つけ麺

つけ麺の替え玉

ボクがつけ麺というものを知ったのは大学一年生のときだった。
 
「自由が丘につけ麺大王というつけ麺専門店ができた」という話を同好会の先輩(二年生)がどこからか聞いてきたらしく、それじゃ一度みんなで食べに行ってみっか、という流れになった。
 
そのとき、会長(四年生)が、「つけ麺だぁ? あんなもん、ただのラーメンのもりそばじゃねえか。オレは行かねえよ、なあ須藤!」とボクを名指して、みんなにつけ麺拒否宣言をしたものだから、ボクは、つけ麺拒否派と見なされ、会長と二人で部室に取り残され、つけ麺を食べ損ねてしまった。
 
そんなこともあってその後の人生においてもボクはなんとなくつけ麺とは縁遠くなってしまった。何回かは食べたのだが、「つけ麺だぁ? あんなもん、ただのラーメンのもりそばじゃねえか」という会長のあの言葉がよみがえってきて、あまりおいしくいただけた記憶がない。
 
あれから45年。つけ麺に対するトラウマからようやく解放されたボクは、堂々と、高柳亭のご主人に、つけ麺を注文した。

高柳亭のつけ麺は初夏の味

つけ麺

待つこと10分。高柳亭のつけ麺が運ばれてきた。麺は大盛りにした。少し甘めのスープに麺がからんでなかなかおいしかった。付け合わせはソラマメ。夏のはじまりですな~。今日は5月18日。外は快晴。高柳亭の窓から入る初夏の風が心地いい。
 
やすみなく風ふく夏に入りにけり(久保田万太郎)