境内の風景
続いて境内の風景を紹介する。
参道
参道入口にある松の木が女帝神社の目印。石畳の参道はおよそ40メートル。両脇はブロック塀とフェンスが続いている。
旧・幟立て
御神燈兼社標のうしろに旧・幟立て(のぼりたて)が一基ある。「国威宣揚」「昭和十三年四月」「青年団第□□部」の銘が確認できる。
幟ポール
石畳の参道を進むと、鳥居の前に幟ポールが一対立っている。このアルミポールは平成12年(2000年)12月に平方南組の氏子中によって奉納された。
鳥居
鳥居の形は明神鳥居(みょうじんとりい)。貫(ぬき)の部分には、しめ縄が張られている。石畳の参道は鳥居を過ぎて左に折れ、女帝神社前の鳥居まで続いている。
神額
神額には「女帝神社」と彫られている。
境内
境内地には、鉄棒と滑り台が設けられていて、子どもの遊び場にも利用されているようだ。雑草などはきれいに刈られ整備は行き届いている。
社(やしろ)が二社あるが、向かって左が女帝神社、右が八坂神社。
女帝神社
赤い鉄柵(瑞垣=みずがき)で囲まれた神域には樹木が植えられていて荘厳な雰囲気がただよっている。
今昔写真
女帝神社の今昔
上の写真の上段(カラー写真)は、2025年6月19日に私が撮影した女帝神社。下段の白黒写真は、46年前、昭和54年(1979年)に撮影された女帝神社(※12)
白黒写真に写っている鳥居を挟んだ左右の大木は伐採されてしまい、切り株だけが残っている。境内のブランコは昭和54年にはすでに設置されている。鳥居の神額は昭和54年には掛かっていたが、現在は神額は掛かっていない。
※12 白黒写真の出典:越谷市デジタルアーカイブ( 平方女帝神社 )
祭神
祭神は、イザナミノミコトと神功皇后(※13)
※13 イザナミノミコト(伊邪那美命・伊弉冉尊)は日本神話に登場する女神。夫のイザナギノミコトとともに国生みをおこなった。神功皇后(じんぐうこうごう)は『古事記』『日本書紀』などにみえる伝承上の人物で、第14代・仲哀天皇の皇后。
信仰
祭神が女神なので、女帝神社は安産の神として昔から女性の信仰が厚い。『埼玉の神社』(※14)に次のような記載がある。以下、引用抜粋。
現在は、出産で命を落とすことはめったにないが、昔は出産は命がけのことで、しかも地元には産婆がいなかったために、家で出産をしていたころはたいへん難儀であったが「女帝さまが守ってくれるので、お産で亡くなった女性はいない」といわれてきた。
ただし、女帝神社が村社の浅間神社に合祀されていた期間だけは、不思議と病人や難産が増え、出産で亡くなる女性も多かった、と伝えられている。引用元:『埼玉の神社』(※14)
※14 埼玉県神社庁神社調査団編『埼玉の神社(北足立・児玉・南埼玉)』埼玉県神社庁(平成10年3月31日発行)「女帝神社」1192頁
石鳥居
社殿前の石鳥居。鳥居の形は明神鳥居(みょうじんとりい)。神額は掛かっていない。
拝殿
拝殿は瓦葺き格子戸造り。本殿ともに昭和42年(1968年)再建。
屋根の下に「村人が 力をあわせ 氏神の やしろを建てし 今日のよろこび」「わが里の 末代までの 御守護神 守らせ給え 女帝大神」「産土の 女神の慈悲に 守られて 幾代久しく 栄えあれかし」という和歌が書かれた木製の短冊が三枚掛けられている。
この三首の和歌から「神社崇敬の念が厚い集落の人びとの、昔ながらの素朴な信仰がこめられている」(※15)ことがうかがわれる。
※15 越谷市役所『越谷ふるさと散歩(下)』越谷市史編さん室(昭和55年4月30日発行)「女帝神社」56頁
本殿
朱色に塗られた玉垣に囲まれた本殿は瓦葺き流れ造り。昭和42年(1968年)再建。玉垣同様、朱色が神々しい。
八坂神社
女帝神社の隣は境内社の八坂神社。石鳥居に「八坂神社」と彫られた神額が掛けられている。
平方南集会所
八坂神社の横にある瓦葺きトタン外壁の古びた建物は平方南集会所。
備考|オビシャ
女帝神社では、1月12日にオビシャ(お備射)と呼ばれる年中行事が行なわれる。「娘飾り」と称する独特なご神体(神饌=しんせん)を祭壇の前にしつらえ、子孫繁栄を願い、氏子たちによって宴会が催される。
「娘飾り」とは、ニンジンの千切りで敷き詰めた麹蓋(もろぶた・こうじぶた)に、ダイコンで作った男根と女体の陰部をゴボウ・フキ・竹などで作った鶴亀で飾り付けたもの(※16)
※16 埼玉県神社庁神社調査団編『埼玉の神社(北足立・児玉・南埼玉)』埼玉県神社庁(平成10年3月31日発行)「女帝神社」1192頁
場所
女体神社の住所は、埼玉県越谷市平方25-1( 地図 )。郵便番号は 343-0002。場所は、旧日光街道「武里駅入口」交差点から平方北通りを200メートルほど進んだ左手。
参考文献
本記事を作成するにあたっては、関係書籍や調査報告書も参考にした。参考にした文献を以下に記す。引用した箇所については記事中に引用箇所を明記した。
加藤幸一「桜井地区の石仏」平成5・6年度調査/平成31年8月改訂(越谷市立図書館蔵)
秦野秀明(2020)「越谷地名大全」(https://koshigayahistory.org/201231_koshigaya_chimei_h_hatano.pdf)
埼玉県神社庁神社調査団編『埼玉の神社(北足立・児玉・南埼玉)』埼玉県神社庁(平成10年3月31日発行)
越谷市役所『越谷ふるさと散歩(下)』越谷市史編さん室(昭和55年4月30日発行)
『新編武蔵風土記稿 第十巻(大日本地誌大系)⑯』雄山閣(平成8年6月20日発行)
日本石仏協会編『石仏巡り入門―見方・愉しみ方』大法輪閣(平成9年9月25日発行)
日本石仏協会編『新版・石仏探訪必携ハンドブック』青娥書房(2011年4月1日発行)
外山晴彦・『サライ』編集部編『神社の見方』小学館(2002年8月10日発行)