2020年11月20日・金曜日。まちづくり越谷と越谷市観光協会が主催する越谷技博(こしがやわざはく)のイベント「地球の遊び方~首都圏郊外編~」(観光地じゃない街の楽しい遊び方)に参加した。講師を務めた遊びの水先案内人・高橋PWさとしさんがおすすめする越谷市内の名所やゆっくり楽しめる穴場スポットを巡った。老舗和菓子店で名物の塩大福をいただき、昼食では、そば処で越谷の郷土料理・鴨すきに舌鼓。紅葉が色づく町並みの景色を愛でながら越谷の魅力を満喫した。

越谷技博2020

ガーヤちゃんの蔵屋敷|越谷技博開催中!

新型コロナウイルス禍の中、三密を避けるべく少人数制・会場の分散など、安全面も最大限に配慮し、市民が安心して参加・交流できる場として企画された体験交流イベント「越谷技博」(こしがやわざはく)。2020年11月7日・土曜日から12月13日・日曜日までの36日間にわたって、伝統工芸の職人や店舗経営者、一般市民らがそれぞれの仕事や特技を生かした講座を越谷市内各所で開催。プログラムの数は100以上、講師は60人を超え、巧みの技や越谷の魅力に触れることができる。

ツアー受付

ガーヤちゃんの蔵屋敷

観光地じゃない街の楽しい遊び方の集合はガーヤちゃんの蔵屋敷前。午前10時50分。ツアー開始10分前、受付開始。参加費は4,000円(昼食・休憩時のお茶菓子代を含む)。ツアーの行程が記されたマップを渡される。マスク着用のルール(屋外は本人の判断で着用するかどうか決める。室内やお店に入る場合は着用する)を確認。今回の参加者は二人(定員は五人)。二回目は日曜日開催なので定員に達しているとのこと。それにしても今日は暑い。11月20日だというのに越谷市の気温は24度。上着を脱いでTシャツ一枚になった。

出発

案内役・高橋PWさとしさん

ガイド役の講師を務めるのは、遊びの水先案内人・高橋PWさとしさん。イベント主催・ツアーコンダクター・旅行雑誌ライター・タウン新聞の編集のほか、ラジオ(こしがやエフエム)のパーソナリティーなど、マルチな分野で活躍している。自己紹介のあと午前11時スタート。参加者のボクとKさん(女性)、案内役の高橋さん、三人いきなり意気投合(笑)。とっても楽しいツアーになりそうな予感。

ガーヤちゃんの蔵屋敷|鉄道ジオラマ

鉄道ジオラマ|ガーヤちゃんの蔵屋敷

「まずはお二人にぜひ見ていただきたいものがあります」。高橋PWさとしさんが案内してくれたのは、ガーヤちゃんの蔵屋敷内にある鉄道ジオラマ・コーナー(有料で鉄道模型を操作することもできる)。南越谷阿波踊りや越谷花火大会など越谷のイベントやキャンベルタウン野鳥の森、しらこばと水上公園など市内の観光スポットが精巧に再現されている。気球に乗って越谷の町全体を眺めている感じ。「越谷市がぎゅ~っとここに詰まっているような気がしませんか」と高橋さん。なるほど、たしかに。

有瀧家の黒塀

有瀧家の黒塀

ガーヤちゃんの蔵屋敷をあとに、越谷ツインシティの間の道を直進。信号を渡って左折。次の信号を右に進む。左手に越ヶ谷小学校があり、道の先のY字路に黒板塀が見える。これは、伊勢屋と号した幕末期の有力商家・有瀧家の黒塀(ありたきけのくろべい)。有瀧家の場所は、かつて 赤山街道 と奥州街道が出合う場所だった。

赤山街道(あかやまかいどう)とは

江戸時代に赤山(川口市)にあった陣屋(役所)まで年貢米を運ぶ街道として整備された道。与野町に至る大宮道、越ヶ谷宿に至る越谷道、竹の塚に至る千住道がある。越ヶ谷宿に至る道は赤山街道・越谷道(こしがやみち)と呼ばれた。有瀧家は、ちょうど、赤山街道越谷道の最終地点にあたる。広義の赤山街道越谷道は、赤山陣屋(川口市)から越谷を通って古利根川(ふるとねがわ)左岸・大川戸陣屋御殿(松伏町)に至るまでの道をいうが、越谷では、赤山陣屋からこの場所(旧日光街道との合流地点)までを赤山街道越谷道とされている。

赤山街道と旧日光街道の合流地点

赤山街道と旧日光街道の合流地点

有瀧家の黒塀を左に見ながら60メートルほど進むと旧日光街道に出る。この地点が赤山街道と旧日光街道の合流地点にあたる。正面にレトロな建物の南部理容所が見える。袖看板には「南部床」とある。かなり古くからやっているようだ。信号を左折。旧日光街道を進む。

中町浅間神社

中町浅間神社

日光街道の左手50メートルほど先にケヤキの大木が見える。中町の鎮守・浅間神社(せんげんじんじゃ)に到着。かつて越ヶ谷町は、本町(ほんちょう)中町(なかまち)新町(しんまち)の行政区に分かれていて、各町に鎮守社があった。本町は神明社、中町は浅間神社、新町は八幡神社。

ケヤキ

浅間神社のケヤキは推定樹齢600年。樹高は約23メートル。越谷市内でいちばん大きなケヤキで、越谷市の天然記念物にも指定されている。

懸仏

中町浅間神社の創建年代は不詳だが、「(室町時代の)応永32年(1425)に奉納された」と裏書きにある富士山をかたどった銅板の懸仏(※1)が残されていることから、古い神社であることがうかがわれる。なお中町浅間神社の懸仏は、現在、越ヶ谷久伊豆神社の参集殿に保管されている。

※1 懸仏(かけぼとけ)は、円形型の板に本地仏(ほんじぶつ)を浮き彫りにしたもの。御正体(みしょうたい)とも呼ばれる。壁などに掛けやすいように円板上部の左右に獅子歯(ししば)が付けられ、これを壁面に懸けて安置させたことから、懸仏と呼ばれた。

中町浅間神社の懸仏|越ヶ谷久伊豆神社で保管

懸仏

上の写真は越ヶ谷久伊豆神社の参集殿に保管されている中町浅間神社の懸仏。富士・浅間神の本地仏である大日如来像が取り付けられている。丸い木型に富士山をかたどった銅板が貼られ、裏面に「富士山内院御正躰南無浅間大菩薩 上野介満範」(ふじさん ないいん みしょうたい なむ せんげんだいぼさつ こうずけのすけみつのり)とある。こうした懸仏は越谷市内には例がなく、「富士山大日如来像懸仏」の名で、越谷市の文化財に指定されている。

越ヶ谷宿の町並み|中町

中町浅間神社から旧日光街道に戻って信号を左折。ここから先は中町になる。中町には昔ながらの商家や土蔵造りのしもた屋(かつては商家であっったが商売をやめた家)が点在し、宿場町のたたずまいが残っている。

木下半助商店

木下半助商店

木下半助商店(きのしたはんすけしょうてん)。なつかしい対面式の店構えが残っている現役の金物屋。表からは見えないが、裏手には、明治32年(1899)の大火後に再建された、土蔵・石蔵・主屋・稲荷社なとが並んでいる。木下半助商店は、平成27年(2015)に、国の有形文化財(建築物)に登録された。

小泉家

小泉家

木下半助商店の対面にある小泉家。今は、格子戸構えのしもた屋になっているが、江戸時代は塗師屋(ぬりしや)の屋号で呉服商を営む豪商だった。主屋は明治32年(1899)築、土蔵は明治8年(1875)築。土蔵は、芋金火事(いもきんかじ)と呼ばれる明治32年の大火でも燃えなかった。土蔵の横にあるレンガ造りの防火壁は越ヶ谷宿の歴史を伝える貴重な史料ともいえる。

鍛冶忠商店

鍛冶忠商店

小泉家の並びにある鍛冶忠商店(かじちゅうしょうてん)。明治33年(1900)に建てられた蔵造りの建物が目を引く日用雑貨店。懐かしい箒(ほうき)や便所紙のほか金属製の湯たんぽなども売られている。残しておきたい光景だ。

越ヶ谷宿の町並み|本町

鍛冶忠商店を50メートルほど進むと信号がある。この信号から先、元荒川手前までが本町エリア。元荒川に架かる大沢橋を渡ると大沢町になる。本来、越ヶ谷宿というのは、越ヶ谷町(越ヶ谷宿)と大沢町(大沢宿)との合宿(あいじゅく)のことをいうが、越ヶ谷町を越ヶ谷宿、大沢町は大沢宿と呼ばれることが多かった。合宿とは、二つの町を併せてひとつの宿場機能を形成すること。商家が多かった越ヶ谷町(本町・中町・新町)には宿場町の面影が残っているが、旅籠が多かった大沢町には、当時をしのばせる建物は残っていない。

はかり屋

はかり屋

本町に入って、ひときわ目を引くのが、はかり屋。秤屋(はかりや)の屋号で秤商を営んでいた旧・大野邸の屋敷(明治38年〈1905〉築)を改修し、平成28年(2016)に、古民家複合施設として再生。テレビや雑誌でも紹介され、越ヶ谷宿の新名所として、評判を呼んでいる。

土蔵もお店に

ミネット(minette)

土蔵を改修したエリアには、キッシュとフレンチ惣菜のお店・ミネット(minette)が入っている。女性に人気。曜日によっては早々に完売になることも。

遊佐農場

遊佐農場

敷地のいちばん奥にあるのは遊佐農場(ゆさのうじょう)。農薬や化学肥料を使わない野菜が評判。旬の野菜を配達してくれる宅配サービスも行なっている(要予約)

会田金物店

会田金物店

はかり屋の対面にあるのは会田金物店(あいだかなものてん)。明治38年(1905)前後に建てられたという建物が歴史を物語っている。今ではほとんど手に入らない大工道具なども置いてあるので、遠方から買いに来る客も多いと聞く。

稲荷屋

稲荷屋

会田金物店の20メートルほど先にある稲荷屋(いなりや)。昭和3年(1928)創業の老舗うなぎ屋だ。店の入口付近はコンクリートに改修されているが、その奥は木造二階建て。昔の面影をとどめている。

これが稲荷屋のうな重だ!

稲荷屋のうな重

稲荷屋は、知る人ぞ知る越谷の隠れた名店だが、存在は知っていても実際に入って鰻を食べたという人の話は、ほとんど聞かない(笑)。そこで、二年前(2018年5月)に稲荷屋で食べたうな重の写真を紹介する(上の写真)。稲荷屋では、注文を受けてから活きた鰻をさばいて焼くので多少時間がかかる、という話を聞いていたので、三日前に電話で予約をしたうえでお店に行った。身がふっくらとしたふわふわの鰻。蒲焼きのたれが染みこんだご飯もまた格別。一度は食べたい老舗の味だ。
 
今回は参加費の関係で稲荷屋はスルー(笑)